税務調査は通常、調査官の直属の上司である統括官の決裁で調査は終了するのですが、 統括官決裁だけでは済まない事案も存在します。
統括官決裁では済まない調査事案は、下記のようなものが挙げられます。
①重加算税の賦課
②(増額)更正
③青色の取消し(推計課税を含む)
④偽りその他不正の行為による6~7年前遡及
⑤一定の増差所得金額基準に該当する場合(増差所得金額が多額になる場合)
統括官決裁で済まない、統括官の上司である副署長もしくは税務署長の決裁になる場合、書面での決裁だけではなく、実際の会議が開催されることになります。 これは「重要事案審議会」と呼ばれており、 これを「じゅうしん」と言います。
重要事案審議会が開催される基準は、税務署によっても相違しますし、課税部門によっても相違することが通常です。
重要事案審議会は副署長決裁の重要事案審議会と署長決裁の重要事案審議会があります。
署長決裁になる場合は、まず先に副署長による重要事案審議会が開催され、そこでの決裁がおりてから、署長による重要事案審議会が開催されることになりますので、2回の重要事案審議会が開催されることになります。
調査官側からすると、重要事案審議会には2つの点で大変なことがあります。
① 重要事案審議会の開催日程の調整
副署長による重要事案審議会はまだいいのですが、署長による重要事案審議会は、 まず日程調整が大変です。署長は多くの署内・署外会議に出席しなければなりませんから、単純な日程調整をするだけでも大変になります。
また秋など、税務調査が数多く行われている時期は、重要事案審議会だけでも立て込むことになりますから、さらに日程調整が大変になります。特に12月の日程調整は、上期の締めになることもあり、本当に大変です。
② 準備が大変
通常の税務調査は統括官決裁ですから、日々報告・連絡・相談をしている統括官に
説明することは非常に簡単で、楽でもあります。
一方で、重要事案審議会となると、副署長や署長が判断できる材料をすべて提示しなければなりませんから、納税者とのやり取りなど、口頭で説明すれば簡単に済むことも、文書化することに多大な時間を要します。
また、法律の解釈のみならず、課税根拠を明確にする必要がありますから、重要事案審議会が開催される前から、審理担当者を巻き込む必要があります。この確認だけでもかなり時間を要します。
ベテランの上席などは、重要事案審議会の大変さを知っているため、調査案件によっては、重要事案審議会の基準に抵触しないように課税する場合もあります。そういう調査案件に当たった納税者はラッキーですね。